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調査報告書

積水ハウス株式会社

 取締役会議長

  代表取締役会長 和田 勇 殿

平成30年1月24日

調査報告書の提出について

平成29年7月20日開催の取締役会にて、分譲マンション用地の購入に関する取引事故についての調査を依頼された件につき、御報告いたします。

 

調査対策委員会

 

委員長 ■

委 員 ■

委 員 ■

委 員 ■

目次

 

第1章 はじめに

 1.本件の社会的意味

 2.調査対策委員会の設置経緯及び目的

 3.委員会の構成

 4.調査方法の概要

第2章 事件の経緯

 1.事件の概要

 2.初期情報の入手

 3.稟議手続

 4.売買契約

 5.契約後のリスク情報

 6.残代金の支払の前倒し

 7.残代金決済と警察への任意同行

第3章 どのような行動が必要であったか

 1.初期情報の入手

 2.稟議手続

 3.売買契約

 4.契約後のリスク情報

 5.残代金の支払の前倒し

 6.残代金決済と警察への任意同行

第4章 本事件の責任についての意見

 1.営業部門の責任

 2.営業管理部門の責任

 3.事後回付とされた主要役員4名の責任

 4.業務執行責任者の責任

 5.取締役会・監査役会の責任

第5章 組織改善に関するプロジェクトチーム設置の提言

調査資料編

第1章 はじめに

1.本件の社会的意味

本件は、不動産を専業とする一部上場企業が55億5千万円という史上最大の地面師詐欺被害にあったということである。また、被害金が裏社会に流されたと推定される。大手金融機関が振込詐欺で甚大な被害を受けるのと同じで、通常起こりえないことであり、絶対にあってはならないことである。

 

2.調査対策委員会の設置経緯及び目的

当社にとって、由々しき事態との認識のもとに、本調査対策委員会(以下、「委員会」という。)は、平成29年7月20日(以下『平成29年』を省略する。)開催の取締役会後、議長の要請により、仮発足し、9月7日開催の取締役会において承認され、正式に発足した。

委員会は、公正公平な視点で、事実関係の経緯を明確にし、発生した原因の究明を行い、当社として、どのような行動が必要であったか、どうすれば防げたかを明らかにする。その結果を踏まえ、より良い業務体制にするために、今後、どうすべきかを取締役会に答申することをその活動の目的とする。

※当社は、平成29年8月2日に「分譲マンション用地の購入に関する取引事故につきまして」(以下、「8月2日付公表資料」という。)をニュースリリースとして公表した。

 

3.委員会の構成

委員会は以下の4名で構成されている。

名 称 調査対策委員会

委員長 篠原 祥哲(当社社外監査役、公認会計士)

委 員 小林 敬 (当社社外監査役、弁護士)

委 員 三枝 輝行(当社社外取締役、株式会社サ工グサ流通研究所代表取締役)

委 員 涌井 史郎(当社社外取締役、東京都市大学特別教授)

なお、9月7日開催の取締役会において、補助員を任命することが承認された。

補助員 ■■■■■ (公認会計士)

4.調査方法の概要

調査の方法としては、本件取引に関与した東京マンション事業部及びマンション事業本部の役職員に加え、本社不動産部、法務部等の関係部署の関与者からヒアリング等を行う方法を採った。具体的な内容は以下の通りである。

 

・関係者ヒアリング

以下の表の日程で、当事者のヒアリングを実施した。これに加えて、不動産稟議の回議者、阿部社長、和田会長のヒアリングを行った。

TB1-1.jpg

※上記ヒアリングにおいて、いずれも、事務局の■■が立ち会っている。

第1章 はじめに

1.本件の社会的意味

本件は、不動産を専業とする一部上場企業が55億5千万円という史上最大の地面師詐欺被害にあったということである。また、被害金が裏社会に流されたと推定される。大手金融機関が振込詐欺で甚大な被害を受けるのと同じで、通常起こりえないことであり、絶対にあってはならないことである。

 

2.調査対策委員会の設置経緯及び目的

当社にとって、由々しき事態との認識のもとに、本調査対策委員会(以下、「委員会」という。)は、平成29年7月20日(以下『平成29年』を省略する。)開催の取締役会後、議長の要請により、仮発足し、9月7日開催の取締役会において承認され、正式に発足した。

委員会は、公正公平な視点で、事実関係の経緯を明確にし、発生した原因の究明を行い、当社として、どのような行動が必要であったか、どうすれば防げたかを明らかにする。その結果を踏まえ、より良い業務体制にするために、今後、どうすべきかを取締役会に答申することをその活動の目的とする。

※当社は、平成29年8月2日に「分譲マンション用地の購入に関する取引事故につきまして」(以下、「8月2日付公表資料」という。)をニュースリリースとして公表した。

 

3.委員会の構成

委員会は以下の4名で構成されている。

名 称 調査対策委員会

委員長 篠原 祥哲(当社社外監査役、公認会計士)

委 員 小林 敬 (当社社外監査役、弁護士)

委 員 三枝 輝行(当社社外取締役、株式会社サ工グサ流通研究所代表取締役)

委 員 涌井 史郎(当社社外取締役、東京都市大学特別教授)

なお、9月7日開催の取締役会において、補助員を任命することが承認された。

補助員 ■■■■■ (公認会計士)

4.調査方法の概要

調査の方法としては、本件取引に関与した東京マンション事業部及びマンション事業本部の役職員に加え、本社不動産部、法務部等の関係部署の関与者からヒアリング等を行う方法を採った。具体的な内容は以下の通りである。

 

・関係者ヒアリング

以下の表の日程で、当事者のヒアリングを実施した。これに加えて、不動産稟議の回議者、阿部社長、和田会長のヒアリングを行った。

・メールチェック(実施日:H29-10-02、篠原監査役、■■会計士、■■)

下表の主要な関係者25名分について、3月1日から7月31日までのメールデータ(31,277件)を収集した。

このデータ群から、キーワード検索『五反田』を行い、抽出分(2,756件)を目視確認し、部署間の情報共有のメールを中心に、重要なポイントとなるメールを選択した。そのメールの前後も探索して、さらに重要性の高いメールを抽出した。その結果、地面師詐欺事件関係の判断に係わるメール52 件と情報開示関係のメール 10件を資料化した。

結果として、関係者ヒアリングで把握した事実経緯と著しく乖離した事情を想起させるメールは発見されていない。

【メールチェック対象者】

TB1-2.jpg

・入手資料

7月20日付陳述書(小田営業次長作成、警視庁捜査2課提出)をベースにして、マンション事業本部からの経緯書、稟議書、ヒアリング対象者の書面報告等の内、重要な項目を追加して経緯書を作成した(調査資料編参照)。

 

第2章 事件の経緯

1.事件の概要

事件経緯の詳細は、後述「12.初期情報の入手」以下の各段階を経て展開したが、概要は次のとおりである。

当社の東京マンション事業部が担当する業務のなかで、東京都五反田の土地建物(以下、「本件不動産」という。)につき、その所有者と称する海老澤佐妃子(後に、偽者と判明した。以下、「偽海老澤」という。)から、その知人と称する生田剛(以下、「生田」という。)が実質的に経営する会社の株式会社IKUTA HOLDINGS (以下、「(株)IKUTA」という。)を中間の売買当事者とし、(株)IKUTAから転売されるという形式で、当社がこれを買い受けることとなった(手付金2,000万円)。その後、(株)IKUTAから、IKUTA HOLDINGS株式会社(以下、「IKUTA(株)という。)に会社を変更した上で、4月24日、所有者とIKUTA(株)の間の代金60億円の売買契約、IKUTA(株)に当社との間の代金70億円の売買契約という2件の売買契約を同時に締結するとともに、所有権移転の仮登記申請手続を行って、増額された手付金14億円(うち、12億円が所有者、2億円が仲介者分)を支払い、仮登記が完了した。

その後、真の海老澤佐妃子から、「真の所有者は自分であり、売買予約をしたり、仮登記を行ったことはないので、仮登記の抹消を要求する。」との内容証明郵便が複数届いた。また、生田との取引に問題があると主張するブロー力一的人物が数人現れ、東京支社、東京マンション事業部への訪問、社長宛書状、本社への電話等を行った。内容証明郵便については、マンション事業本部と法務部で情報共有されていたが、不動産部には知らされなかった。執行役員不動産部長黒田章(以下、「黒田」という。)には、子会社社長より生田は信用すべき人物ではないのではないかというリスク情報が寄せられており、常務執行役員マンション事業本部長三谷和司(以下、「三谷」という。)には懸念事項として伝えられたが、この情報は法務部には伝えられていない。真の所有者と名乗る者の出現により、当初は本人確認の再徹底が問題となり、弁護士等からは、「知人による確認」も必要であるとの指摘があったが、結局、5月19日の建物内覧時にも偽海老澤は現地に現れず、「知人による確認」は最後まで実施されなかった。 一方、5月22日開催の三谷と常務執行役員法務部長中田孝治(以下、「中田」という。) がともに出席したマンション事業本部の会議において、7月31日に予定されていた残代金支払いをできるだけ前倒しで実施し、ブローカー的人物達の関与を極力回避しようという方針が固まった。

その後、当社から生田、偽海老澤に提案する形で、同年6月1日に決済を前倒しして、残金支払い並びに所有権移転日とする変更契約を行った。同日(6月1日)は現場に警察が介入し、現場確認に行った当社社員は任意同行を求められたにも拘わらず、留保金7億円を残して、売買代金として、合計約49億円をIKUTA(株)に支払うとともに所有権移転登記手続きを進めた。しかし、6月6日には、法務局より本登記申請を却下する方針であることが告げられ、6月9日には正式に登記申請却下の通知が届き、偽海老澤が偽の所有者であることが判明した。その時点では、すでに偽海老澤とは連絡が取れなくなっていた。当社は、偽海老澤との間で、約7億5千万円の分譲マンション売買契約を締結し、その代金を留保していたので、分譲マンション売買契約の解除による相殺によって、当社の実質的被害額は約55億5千万円となった。

以上の通り、当社が、55億5千万円という極めて高額な地面師詐欺の被害を受けたものである。

2.初期情報の入手

3月30日に、東京マンション事業部営業次長小田祐司(以下、「小田」という。)が、私的な会合で知り合った生田から本件不動産の情報を入手したが、その所有者が「売らない地主」として有名な物件であったため、小田は、不動産の知識の乏しい生田にこのような土地が手に入るはずはないと考えていた。

当初、小田らは、真の所有者の確認が絶対に必要であるといった下記の当然の判断を生田に示している。

  1. 生田に対し、相手が真の所有者かどうか確認すべきであり、そうでなければ手付金を支払うべきではないなどと、地面師詐欺を意識したアドバイスまでしている。

  2. 生田から、3月30日、本件土地購入方の打診があった際、小田は、その実現を疑問視し、生田には資金がないはずだと推察している。

  3. かねてより、同業者間では「売らない地主」として有名な所有者の物件であり、当社営業員もその地主に接触できずにいたもので、動き出すという噂はあったものの、入札ならば80 億円から100億円と噂された物件であると理解していた。

ところが、生田から、4月3日に少額手付(2000万円)で売買契約を締結し、公証人役場で、パスポートと印艦、印鑑証明書による本人確認を実施し、公正証書による認証(提示された偽パスポートによる確認でしかない)を示されて、生田(IKUTA(株))から転売する形で、偽海老澤から本件土地を購入すべく動き出すことになった。

3.稟議手続

4月14日に三谷、マンション事業本部不動産部長■■■■(以下、「■■」という。)、東京マンション事業部長■■■(以下、「■■」という。)、同技術次長■■■■(以下、「■■」という。)、小田が参加した会議において、本件不動産の購入を進めることで合意し、4月17日の朝までに不動産購入稟議書を作成することを決定した。また、4月18日に予定されている阿部俊則社長(以下、「社長」という。)の視察物件の中に、検討中物件として、本件不動産を組み込むこともあわせて決定した。同日付で当該稟議書をマンション事業本部から不動産部に送付した。

4月19日に不動産部が稟議書を受け付けて、19日中に経営企画部長■■■、執行役員経理財務部長■■■■、常務執行役員法務部長中田孝治(以下、「中田」 という。)までが関係先として稟議書の内容を確認した。それ以前に、三谷、■■からの至急対応の要請を受けていた黒田は、残る回議者4名(常務執行役員東京支社長■■■■、取締役常務執行役員仲井嘉浩、取締役専務執行役員内田隆、取締役副社長稲垣士郎)への回付を後回しとすることを自ら判断して、4月20日に黒田本人が社長のところに本件稟議書を持ち込んで、社長の決裁を得た。 その時、社長からは、後述の売買相手の変更を含め、明確な質問はなかった。

稟議書の内容も、多くは、事業性などに関心を寄せたものになり、その売買相手の(株)IKUTAに関しては、欄外の付箋で、「売主イクタホールデイングス H20年設立 主にアパレル系で多角経営 資本金1億 宅建業者ではありません」との担当者間のやり取りの記録があるだけで、その信用性を問題にする記載は一切なく、所有者の海老澤についても、その信用性をどのように確認するのかといった問題認識に関する記載は全くない。

また、売買相手の名義は、直前(4月19日)になって、生田側の要望で、(株)IKUTAから女性の近藤久美が代表者となっているIKUTA(株)に変更される。これは、稟議書上では、鉛筆書きで修正されている。

 

4.売買契約

東京マンション事業部では、4月20日に、以下の者が集まり、必要書類の確認をした。小田はこの時初めて偽海老澤に会った。24日の段取りとして、海老澤−(株)IKUTAの契約解除が必要であると説明し、小田は、手付金14億円の支払いを預金小切手(12億円と2億円に分割)で行うことも提案し、承認された。

 ・偽海老澤

 ・偽海老澤の財務担当と称する人物である小山武(小山操)(以下、「小山」という。)

 ・生田

 ・近藤久美(以下、「近藤」)

 ・高田司法書士(海老澤―IKUTA(株)の登記担当)

 ・遠藤司法書士(IKUTA(株)―積水の登記担当)

 ・小田

 ・東京マンション事業部■■課長

先述の稟議決裁を受けて、予定通り4月24日に、偽海老澤、小山、生田、近藤、高田司法書士、遠藤司法書士、小田、■■が一堂に会して、海老澤―(株)IKUTAの契約解除、海老澤―IKUTA (株)の売買契約締結、IKUTA(株)―積水の売買契約書締結を実施した。この売買契約によって、当初2,000万円であった手付金は、14億円に増額されたが、それは、偽所有者からの手付解除を恐れて、当社から提案したものである。この売買契約では、建物解体が売主責任だったため、残代金支払(56億円)や本登記、引渡しは、その余裕をみて、7月31日(月)とされていた。稟議書では、(株)IKUTAと当社との売買契約であることが示されていたが、4月19日の生田からの節税目的のためという申入れによって、契約当事者を安易に(株)IKUTAからIKUTA(株)に変更していた。同時に売買契約を4月24日(月)に締結して、所有権移転の仮登記を実施した。

売買契約締結時には、偽海老澤が持参したパスポート原本、印鑑証明書原本、住民票原本、権利証のカラーコピーを司法書士2名が確認した。仮登記申請の受理を確認した後に、12億円の預金小切手を生田に渡し、すぐに生田から偽海老澤にその小切手が渡された。生田への残りの2億円は、同日振り込まれた。4月29日に仮登記手続きが完了した。

 

5.契約後のリスク情報

 以下、4月29日に仮登記手続きが完了した後、5月10日から23日迄、複数のリスク情報を入手している。

 

ア) 内容証明郵便による警告について

手付金を支払い、仮登記手続が完了した4月29日から間もない5月10日に本社法務部が「御通知書」と題する海老澤名義の内容証明郵便①(5月8日付)を受領し、直ちに東京マンション事業部と情報共有した。その内容は「本件不動産の所有者だが、仮登記がなされ驚いている。売買契約はしていないから、仮登記は無効であるので抹消せよ。」との主張で、宛先は当社とIKUTA(株)であった。この書面を受けて、同日、小田と■■は小山、生田、近藤と打合せを行い、あらためて本人確認を徹底することで合意した。また、同日中に顧問の■■弁護士に対し、本人確認の方法を相談し、「①知人による確認、②消印付郵便物、③納税証明書、公共料金納付書、④健康保険証、⑤年金手帳、⑥預金通帳等で、可能な限り多くのことを確認すること。」との回答を得ていた。

この「御通知書」に続き、5月11日には、当社と高田司法書士宛に「御通知書」と題する海老澤名義の内容証明郵便②(5月9日付)が届いた。内容は「仮登記を抹消せよ」「抹消しなければ、民事等の法的手続きをとる」との警告になっていた。11日には、更に当社と高田司法書士宛に「通知書」と題する海老澤名義の内容証明郵便③(5月10日付)が届いた。内容は、自身の持つ印鑑登録証のカード番号まで記載した上で、「結論として、別人との取引で私にとっては偽造された無効のものです。」「登記簿には公信力がないので、真の所有者から買い受けない限り、所有権を取得することできない。」との主張となっている。加えて、5月23日には、会社と高田司法書士とIKUTA(株)に「現状回復催告書」と題する海老澤名義の内容証明郵便④(5月22日付)が届いた。内容は、仮登記の抹消登記手続きを即刻行うよう催告し、「老婆心ながら・・・積水ハウス(株)様等を含めた被害者関係者様において、別人について同一性の綿密・詳細な客観的・合理的・相当な調査をなされることは、損害の拡大防止の為、必要不可欠と思料しておりますので、本書をもって告知させていただきます。」との記載があった。

これら4通の内容証明郵便は、所有者である海老澤佐妃子名義での内容証明郵便として配達され、真の所有者が自分であり、この取引は偽物によるものであると警告している。

 

イ) 数人のブロー力一的人物の出現について

上記ア)の内容証明郵便の受領翌日の5月11日に(株)クレシェンドの木村と称する人物が東京マンション事業部を訪れ、対応した■■は、「生田に本件取引から外された」との申入れを受けた。翌5月12日には、東京支社に(株)夕陽の丘日本海秋田国際ホテル代表取締役三ツ橋正八と称する人物が来社し、生田との取引は不適切なものであると抗議し、自身が介在して解決すると申入れした。これら一連の動きは、生田に対する苦情・不信の類であり、直接的に偽海老澤の本人性に疑義を唱えるものではなかったので、マシショシ事業本部内では、当社の取引を妨害したい者の嫌がらせと判断していた。

なお、同日(5月12日)に、積和不動産関西(株)の■■社長から黒田に対し、本件の取引に関し、「当社が支払った手付金が地主には少ししか支払われていないという噂があるが、仲介相手は大丈夫か。」という連絡があったので、生田の信用性に疑問があるとの情報がさらに追加されることになった。この■■社長からの情報は、当日には、三谷に伝えられているが、三谷は「生田は当社のダミーであるし、売主の本人確認はできている。」と回答し、以後、特に考慮されないままに終わっている。

 

ウ) リスク情報(内容証明郵便とブロー力一達)への対応について

4通の内容証明郵便による警告に関して、マンション事業本部と法務部は、「本人は面会謝絶としながら、代理人名の書状ではないこと」といった幾つかの矛盾点があるとして、怪文書の類(偽海老澤との関係がこじれたとされる内縁の夫前野某の妨害工作の一種) と評価した。 但し、両部とも本人確認の再徹底はやはり必要であると認識したものの、具体的な手段としては、法務部から東京マンション事業部に対して、5月11日時点で、「所有者の本人確認を再度行って、通知書を自身が出したものではないということなら、その旨の一筆(以下、「確約書」という。) をもらうように。」との指示をしたにとどまった。 この指示を受けて、海老澤名義の内容証明郵便④ (5月22日付)を受領した日(5月23日)に、当該内容証明郵便を含む4通内容証明郵便を偽海老澤に示した上で、偽海老澤から確約書を入手した。

なお、苦情を申し入れた複数のブロー力ーに対しては、そもそも当社が関知する立場ではないとして、一切の対応を拒否した。

 

エ) 知人による本人確認と建物内覧について

■■弁護士から指摘のあった「知人による確認」に関しては、5月19日の建物内覧時に偽海老澤が現地に来ることから、その時点で何らかの対応が可能であると担当者らは目論んでいたようではあるが、同日、偽海老澤は現地に来ず、代理人という栃木弁護士が勝手口の南京錠の鍵を持って現れた。海老澤から小山への折返し電話で、体調不良のため、栃木弁護士に現地立会を依頼したとの説明だった。つまり、偽所有者は、この時点でも、現場には一度も足を運んでいない。やむなく、確約書の捺印等の対応も含めた海老澤との面談を、5月23日午後3時に栃木弁護士の事務所で行うことになり、建物内覧自体は問題なく終わった。本人が現場に来なかった以上、「知人による確認」に変わる本人確認としては、写真による近隣への聞き込み等が考えられるが、「海老澤の機嫌を損ねるのではないか」と考えて、三谷以下、マンション事業本部内では、第三者の確認をしないまま、確約書を入手することが本人確認の方法となった。

 

6.残代金の支払の前倒し

 7月31日に予定されていた残代金決裁を前倒しすることをマンション事業本部で考えて、5月22日に、中田、三谷、■■、■■、■■、■■、小田、■■が出席して、本件取引に対する今後の対応が話し合われ、ブローカー的人物達の妨害を極力回避する目的で、残代金支払いの前倒しという方針が固まった。翌5月23日に、偽海老澤、栃木弁護士、小山、生田、近藤と三谷、■■、小田、■■が栃木弁護士の事務所で協議した。三谷より、海老澤に対して、合計4通の通知書や現状回復催告書を提示し、この取引を行っている海老澤は偽物であると書かれていることを伝えたが、偽海老澤は、驚くこともなく、その場で当社が用意した「確約書」に署名押印した。また、三谷が、「物事の沈静化のやり方として、例えば、決済時期を前倒しにするということも考えられる。」と言うと、その場にいる全員が反対しなかった。三谷、■■、小田、■■は、会社に戻ってから、『決済の前倒し:決済日を7月31日から6月1日に変更。同日残金49億円を支払い、留保金7億円を解体・境界確認等を待って、7月末支払い。』とする提案を生田に申し入れることを決定した。翌5月24日には、小田より小山、生田、近藤に7月31日から6月1日に残代金支払日を前倒しにすることを伝え、その了承を得たので、翌5月25日には栃木弁護士とも協議し、残代金支払日の前倒しが決定した。

 当社の社内対応としては、5月23日か24日(黒田の記憶では25日頃)に、三谷が黒田に電話して、法務部とも打合せの上、留保金7億円、解体は売主責任との条件で決済を6月1日に前倒しすることを説明した。黒田(内容証明郵便の件は不知)は、「決済後の妨害リスクを覚悟の上で、移転登記を早められるのであれば、これにこしたことはない、ただ、金額も大きく、三ツ橋等のネガティブ情報もあるので、通常の案件では要求しないが、決済金の支払いについては、社長の了解を取ってほしい。」と伝え、三谷はこれを了承した。

 当時(22日から27日)、社長は海外出張中であったことから、■■が秘書部長に連絡して、5月30日に社長自宅から羽田空港に向かう車の中で、三谷から社長に報告することとなった。三谷は、不動産部、法務部承認のもとで、残代金の決済を6月1日に前倒しすることを社長に伝えた。すぐに、このことは不動産部に報告され、(預金小切手を複数作成するための準備に時間が必要であったために、)決済前日の5月31日には、東京マンション事業部の口座に残代金が入金された。

 同じく5月31日の打合せで、偽海老澤が合理性のない理由(内縁の夫との関係がこじれ、会いたくない)で本件不動産の権利証の提示ができないと言い出したが、相手弁護士や司法書士から、弁護士作成の本人確認証明で移転登記可能と聞くと、安易にその方法を受け入れた。本人確認証明での登記申請は、小田の単独判断で進められた。なお、小田は、同日の本人確認証明作成時に、偽海老澤が自分の誕生日、干支を間違えるなどしていることを高田司法書士から聞いていた。

 

7.残代金決済と警察への任意同行

残代金決済日の6月1日は、東京マンション事業部会議室に9時30分に集合のはずだったが、偽海老澤は体調不良を理由に10時10分頃に到着した。予告していた通り、権利証は持参していない。9時前から現地にいた当社スタッフから、建物の中に電気がついているとの連絡があり、小田が、建物内に入って確認するように指示をしたところ、通報により、警察官が来て、当社スタッフが任意同行を求められた。小田が警察に通報があったことを取引の場にいたメンバーに伝えたところ、皆が口々に「通知書等を送ってきたのと同じく、この取引を妨害しようとしている人たちの仕業だろう」ということを言い、契約行為はそのまま続行された。同日、登記申請書が法務局に受付されたことを確認した後、当社は、複数に分割した預金小切手49億円を中間業者に渡し当社の眼の前で中間業者から偽所有者にその小切手の大部分が渡された。警察沙汰も発生し、真実がはっきりしない状況の中で、6月6日(火)に法務局から本登記申請を却下する方針が告げられて、6月9日(金)には、正式に登記申請却下の通知が届いた。

 

第3章 どのような行動が必要であったか

1.初期情報の入手

初期情報の入手時点で、下記気付くべき点が多数存在しているにも関わらず、小田は、公正証書の入手のみをもって生田を信用してしまい、その結果、生田と偽海老澤との出会いや信頼の根拠となる関係性さえ、全く不明のまま、短絡的に所有者も契約も信用できると判断されていた。そのため、以後は、何らの疑いを差し挟まないまま当社は契約獲得を急いでいる。このことは、高額の土地取引を直接担当する者としては、明らかに慎重さを欠く判断であり、その過失は大きいと考えざるを得ない。

また、マンション事業本部長三谷、東京マンション事業部長■■、同技術次長■■を含む幹部も、小田らの判断に寄り掛かり、取引先の信用力を確認する発想がほとんど見られないことも非常に大きな問題である。また、偽海老澤の本人性への疑問が余りにもあっさりと解消されている点については、全く理解に苦しむところである。

本報告書作成時において、当委員会の議論の中では、生田と小田の間には、何か個人的で不適切な関係が存在していたのではないかとの疑義さえでた。勿論、そのような証拠が何ら得られたわけではないが、生田への過度の信頼や偽海老澤と同人の関係性への関心の薄さなど、その経緯を振り返るとき、当然そのような疑いが生じる。

この段階で気づいて対処すべき事項は、下記のとおりである。

① 公正証書の証拠力(偽造パスポートでも、公正証書は作成される事実)

② 偽造パスポートは容易に安価に入手できること。

③ 中間業者の会社・会社代表者の実態及び背景

  • 生田の交際関係者のなかに■■■■元代議士などが含まれていること。

  • 担当者小田は、数回程度の飲食会に同席していた程度で、生田を信頼したこと。

  • 生田が著名人や名士との交際があるとしても、生田本人が何を生業としているのか、どのような経歴の人物かといった点をよく知らない。

  • 偽海老澤の周辺人物として現れるのが、生田、小山など、ブローカーなどを中心とした人物となっていること。

④ 土地所有者の売却の動機

  • 本物件は問題のある物件として知られており、かつ、所有者は長年にわたり売却を拒んでいたと知られているのに、なぜ、急に売却することになったのか。

  • 時価100億円と言われている土地を、不動産の素人である生田が60億円で購入できることとなった経緯が不明であり、合理的な説明が一切ないこと。また、資金力のないはずの生田という相手と60億円もの高額の売買契約に安易に応じる所有者の態度が不明であること。

⑤ 中間業者と土地所有者との関係

  • 土地の所有者が中間業者に10億円もの多額の利益を手に入れることを了承している理由

※稟議書提出後ではあるが、同総務長■■■(以下、「■■」という。)が4月19日に、(財)暴追都民センターで生田の登録確認を行い、登録確認されていないことや(株)IKUTAが帝国データバンクに未登録であること等を確認している。

 

2.稟議手続

不動産稟議は、東京マンション事業部で起案され、マンション事業本部の意見を付し、不動産部で受付けの上、関係先(法務部等)及び回議者の審査を受けて、社長の決裁を得るものである。この件については、回議者の審査の前に、社長の決裁を得る「事後回付」の手続が取られている。起案が4月18日で、不動産部の受付が19日、社長決裁が20日、回議者の審査は24日以降となっている。また、社長の現地視察は4月18日に行われ、契約日は稟議書の不動産部への到着日から5日後(土日を除けば3日後)の24日であった。

この段階で気づいて対処すべき事項は、下記のとおりである。

  • 稟議書の記載内容において、前述の初期情報で気づくべき点とされる事項がほぼ記載されていない。

リスク管理部門である不動産部と法務部が、稟議書の記載内容不足を指摘し、リスク情報に気付くべきであった。

  •  短期間での決裁で、十分な内容の吟味ができていない。

不動産部長が通常とは異なるステップで稟議を進めた根拠は、マンション事業本部長からの至急要請があったことによるが、社長が現場視察を済ませていると聞かされていることが影響している。

  • 売買業者の変更

稟議時点の中間業者が、相手方の申入れで変更されているが、新しい中間業者は、当初の中間業者の(株)イクタホールデイングスからイクタホールデイングス(株)というペーパーカンパニーに変更され、代表者も女性に変わっている。これに強い疑問を持つべきであった。なお、イクタホールデイングス(株)の2名の女性取締役の内、代表取締役近藤久美の夫の背景調査はなされておらず、取締役■■■■の夫は、■■■■元代議士である。そして、この会社は事件後に繋がりを消すためのペーパーカンパニーであり、このような会社は、絶対に、当社の取引先であってはならない。

 

3.売買契約

 稟議決裁後の契約段階においても、気づいて対処すべき事項は、下記のとおりである。

①    4月20日の「確認記録票(個人用)」に記入する際に、偽海老澤は自分の住所の番地以降の数字を書き間違えた意味。

②    4月20日の事前打ち合わせで、権利証のカラーコピーを見るだけで、原本確認をしなかった。 ※4月24日の契約当日には、司法書士2名が権利証の原本確認を行ったが、これは権利証の記載と登記内容が合致しているかいないかの確認であって、真贋を判断するものではなかった。権利証の確認が杜撰で、偽の権利証を見抜けなかったことになる。

 

4.契約後のリスク情報

4月29日に仮登記手続きが完了した後、5月10日から23日迄、複数のリスク情報を得ている。 この段階で気づいて対処すべき事項は、下記のとおりである。

① 郵送された「内容証明郵便」の重要性。 内容証明郵便は、訴訟の際の証拠等として採用されるものであり、4通もの内容証明郵便を取引妨害とみなすことは非常識である。 本人と偽って内容証明郵便を取引先に送りつけるような行為は、内容によっては犯罪になりかねないことである。

※内容証明郵便を見た時の偽海老澤の様子について、落ち着き払っていたとの証言があるが、自分を名乗る不審者が取引先にこのような書面を送ってきたら、動揺するのが当たり前であり、自分が真の海老澤だと証明しようと考え、警察に告発しようとするのが普通の反応である。

※「内容証明郵便」への対応を生田に相談している。

 

② 「内容証明郵便」に真の所有者の個人情報が記載されている意味。

自己の印鑑登録証の番号を記入して、別人の成りすましを警告しており、信憑性が高い。

③    ブロー力一的人物が出現したこと、積和不動産関西(株)■■社長からの情報の検討。

内容証明郵便の対応を生田と協議した直後、ブロー力ーが出現したことに、両者の関連性を考えるべきであった(わざと怪しい人物を出現させたのではないか)。

また、■■社長からの情報は、何ら検討されずに、完全に無視されている。この情報は地面師詐欺を疑わせる貴重な情報であった。

 

④     知人確認を行わず、偽所有者の「確約書」を含む書類偏重の本人確認のみでは十分でないこと。

リスク情報を得てから、再度本人確認を行うに当たって、知人による本人確認を行わず、「確約書」の入手で済ましている。確約書は、『自分は内容証明郵便を出したことはないこと』、『自分以外に本件不動産の所有者は存在しないこと』の2点を確約保証するというものであり、結局は、詐欺犯に詐欺をしていないと確約させるもので、何の意味もない書面である。

※この確約書は、本人でないとの疑いを示すもので、機嫌を著しく損ねるものであり、8ページ「第2章5.工)」記載の「海老澤の機嫌を損ねるのではないか」と推測して、「知人による確認」を行わなかったこととする担当者の主張とは矛盾している。確約書をもって、近隣確認が行われていないが、海老澤が旅館業を長年営んでいたのは周知の事実であるから、その旅館業者への照会、旅館団体への照会を依頼するといったやり方や、本件土地の近隣への聞き込みがなされていない。本件土地周辺には、ラーメン店や中華料理店なども存在しており、聞き込みに困難な事情も全くなかったはずである。また、駐車場の契約者・旅館経営時の取引先・顧客といったものも複数確認できたはずである。

 

⑤ 様々な理由を言って、本人が一度も現場に来ない意味。

所有者が体調不良を理由に、建物内覧時に現地に来なかったことや、聞いてもいない弁護士が現地に登場して、表玄関の鍵を開錠せずに、裏口の南京錠を開錠したことにも深い疑念を持つべきである。

また、所有者は、長年にわたって旅館業を経営し、当該不動産に愛着を持っているはずであり、売却時に一度も現場に同席しないことは常識的に考えられない。

 

5.残代金の支払いの前倒し

5月31日の打合せで、本件不動産の権利証の代替として、弁護士作成の本人確認証明で対応したが、支払前日の突然の申出に強い疑念を抱くべきであった。

また、小田は、同日の本人確認証明作成時に、偽海老澤が自分の誕生日、干支を間違えるなどしていることを高田司法書士から聞いていたのであれば、前述の住所の書き間違えの事実と合わせて、疑念を持つべきであった。

 

6.残代金決済と警察への任意同行

6月1日の残代金の支払日当日、まさに取引の開始前において、現地で当社担当者が警察に出頭を求められるという事態が発生している。このこと自体が異常事態であり、単なる売買行為の妨害のために、警察が出動することは考えられない。

従って、取引を中断し、売主・中間業者が会議室に揃っているので、土地所有者を警察または現場への同行を求めるべきである。

また、如何に考えても尋常ではない事態であり、仮に小切手を交付した後であっても、速やかに小切手の保全措置を取るべきである。

 

事件の調査結果は以上である。

 

第4章 本事件の責任についての意見

1.営業部門の責任

上述のとおり、担当者が結果を急ぐ結果、証拠力のない公正証書を信じて、取引を進めている。更に、先方の地面師グループの一員を重要な意思決定の場に入れており、相手の掌の上で踊らされ、複数の気付くべき点を完全に無視する結果となり、多額の損失が生じた。

また、マンション事業本部は、取引の全貌を把握し、正しい判断をすべき立場にあるが、上記の流れに乗ってしまい、その責務を果たしていない。この責任は、上位者になるほど重い。

 

2.営業管理部門の責任

以下の法務部、不動産部は、現業の営業部門に対するスタッフ機能を有するが、稟議手続・リスク情報への対応を含め、責任を有する。

 

- 法務部

初期段階で、公正証書は偽造パスポートでも発行されるもので、偽造パスポートは比較的簡単に入手できるという知識が法務部長になく適切な指示を与えていない。

複数の内容証明郵便を受け取りながら、意味のない確約書の入手を指示している。また、「知人への確認」の実施を強く指示せず、結果を確認していない。内容証明郵便は、所有者の真偽を確かめる上で重要な意味を持つことを、正しく認識して行動すべきである。非常に重要なリスク情報なので、当然関連部門及び社長に報告し、対応を協議すべきであった。 このようなリスク情報があるにも拘わらず、残代金の前倒し支払いを容認していることは、法務部が本来持つべき牽制機能を果たしていない。

 

- 不動産部

稟議書の回付について、社長の現場視察直後、稟議を急がされて、回議主要役員4名への回付を後回しとする「事後回付」としたのは不動産部である。本来、社長の現場視察と関係なく、不動産事業を管轄している限り、不動産取引に関連するリスクを把握した上で、マンション事業本部内での検討の不徹底を把握し、物件のリスク情報を十分に検討し、稟議書に記載すべきであった。

また、内容証明郵便の存在を知らされていなかったとはいえ、■■社長のネガテイブ情報を法務部と共有していない。本件の取引金額の大きさ等を勘案すれば、より慎重な判断が必要であり、不動産事業の全社的な管轄部署として、リスク管埋が不十分であった。

 

3.事後回付とされた主要役員4名の責任

事後回付とされた主要役員4名(稲垣副社長、内田専務、仲井常務、■■東京支社長)は、審査時に、収益面等についての検討は行っているものの、リスクの検討は、担当の管理部門が実施していると判断した。しかしながら、本件のような結果となれば、審査が不十分であったとの責はある。

 

4.業務執行責任者の責任

本件取引の主体像を把握して、誤った執行にならないよう防ぐ責任は業務執行責任の最高位者にあり、最後の砦である。業務執行責任者として、取引の全体像を把握せず、重大なリスクを認識できなかったことは、経営上、重い責任がある。

 

5取締役会・監査役会の責任

取締役会には、取締役(代表取締役を含む) の職務執行の監督権限あり、監査役会には取締役の職務執行を監査する責任があるが、稟議決裁が4月20日、本件事件の取締役会への報告が発覚後の6月9日となっているので、直接の責任はないが、このような不祥事が生じた場合は、制度の運用が不完全な部分があったことになり、結果責任はある。

代表取締役会長も、このような事態が発生したことに責任がある。人事及び制度の責任者として、速やかにリーダーシップを持って、再発を防止するために、人事及び制度の運用について、不完全な部分を是正する責務がある。

 

第5章 組織改善に関するプロジェクトチーム設置の提言

今回の事件で明らかになった病巣を取り除けるよう、人事及び制度の改善を行うことが重要である。最高経営責任者のリーダーシップのもとに、プロジェクトチームを設置し、対応することを提言する。

当社は、事業に成長性も収益性もあり、営業の突破力もあるが、本件は、制度の隙間を突いて発生しており、病巣が隠れて育っている可能性がある。従って、改善すべき点は、多岐にわたっており、個々の改善点の指摘では不十分であり、トップのリーダーシップでプロジェクトチームを設置し、根本的に人事及び制度を見直す必要がある。

調査委員の一致した意見である。

 

 

調査資料編

1.経緯書

2.公表資料

ž (H29-08-02)分譲マンション用地の購入に関する取引事故につきまして

ž (H29-09-07)分譲マンション用地の取引事故に関する調査対策委員会の設置について

ž (H29-09-07)取締役の減俸処分等に関するお知らせ

3.新聞報道等

ž (H29-08-03) 日本経済新聞『最大63億円損失の可能性 積水ハウス、土地購入で』

ž (H29-08-03)上記の日本経済新聞と同様の記事 読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞、共同通信ニュース等

ž (H29-08-03) NHK『関西のニュース』

ž (H29-08-03)上記のTVニュースと同様のTV報道 テレビ朝日『グッド!モーニング』、関西テレビ『FNNスピーク』、テレビ朝日『ANNニュース』、読売テレビ『情報ライブ ミヤネ屋』、日本テレビ『news every』

ž (H29-08-04)読売テレビ『す・またん!』、日本テレビ『スッキリ!!』、毎日包装『ちちんぷいぷい』

4.稟議資料

ž (H29-04-20)不動産稟議書(購入)H29(購)第146号(仮称)グランドメゾン五反田 マンション用地購入の件(起案部署:東京マンション事業部 平成29年4月18日起案)

5.取締役会資料

ž (H29-06-09)取締役会報告事項2.品川区西五反田のマンション用地仕入に関するご報告

ž (H29-07-20)取締役会報告事項4.品川区西五反田のマンション用地仕入に関する経過報告

6.取引関係資料

ž (H29-04-24)土地売買契約書

7.経緯確認のためのヒアリング記録

 マンション事業本部

ž (H29-09-07, H29-10-16)三谷常務執行役員マンション事業本部長

ž (H29-09-14) ■■マンション事業本部不動産部長

ž (H29-09-14)■■東京マンション事業部長

ž (H29-09-14) ■■技術部長

ž (H29-09-14)小田営業次長

ž (H29-09-14) ■■総務長

ž (H29-09-14) ■■課長

 稟議回議者等

ž (H29-10-16)稲垣取締役副社長

ž (H29-10-16)内田専務取締役

ž (H29-10-16)仲井常務取締役

ž (H29-09-14) ■■常務執行役員東京支社長

ž (H29-10-16) ■■執行役員経理財務部長

ž (H29-10-16) ■■経営企画部長

本社

ž (H29-09-01, H29-10-16)黒田執行役員不動産部長

ž (H29-09-01, H29-09-07, H29-10-16)中田常務執行役員法務部長

ž (H29-10-19)阿部代表取締役社長

ž (H29-10-19)和田代表取締役会長

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