積水ハウスはオリンパス 2.0と言うべき不祥事事例か?
オリンパス2.0[1]
会社: 積水ハウス株式会社
本店所在地: 大阪
業種: 住宅建設、土地開発等
不祥事が発生した年度: 2017年〜
取締役会構成(2019年時点): 取締役 11 名(内、3名のみが社外)
不祥事の内容: 五反田の土地を巡る地面師詐欺 – 同社は「Big 4」が東京の一等地の所有権を得られず、物件取得代金51.9百万米ドルを十分な確認を行わないまま詐欺師に支払い、当該資金を回収できず、また同社への売り手に対して事件発生から2年経過した時点でまだ訴訟を提起していなかった
警告となった内容: 物件取得取引の完了に対してなされた少なくとも15の警告を見落とし、物件取得代金51.9百万米ドルの支払いに先立ち十分なデュー・ディリジェンスを行わなかったこと
上記の中の大きなもの: 反社会的勢力により運営されていた可能性のある仲介業者IKUTAに対して通常使わない方法で支払いを行ったこと
社内の違法行為者: 阿部俊則(当時代表取締役社長兼COO)、稲垣士郎(当時取締役副社長CFO)、仲井嘉浩(当時取締役常務執行役員)、内田隆(当時取締役専務執行役員)(「Big 4」)
違法行為を行った業務執行責任者(COO)の任期: 阿部は同社の国内事業を10年間担う
違法行為の発見態様: 社外取締役と社外監査役により構成される調査委員会が調査報告書を作成し、阿部俊則が「業務執行責任者として、取引の全体像を把握せず、重大なリスクを認識できなかったことは、経営上重い責任がある」と指摘した。当該調査報告書は、阿部・和田勇(当時同社の会長)、そして5人の社外役員から成る人事報酬諮問委員会(「PCAC」)に提出された。阿部を除く全員による投票の結果、PCACは阿部の解任につき全員一致の見解を出し、取締役会に対して報告した
和田氏のバックグラウンド: 同社に53年間勤務し、近年は同社の国際事業に注力。本件事件発生までに、本件事件の報告を全く受けていなかった。
和田氏の対応: PCACから出された、「和田氏が人事及び制度の責任者として速やかにリーダーシップをもって、再発を防止するために、人事及び制度の運用について、不完全な部分を是正する責務がある」との見解をベースに、取締役会に伝え、阿部を解任するよう提案し、是正の責務を果たそうとした
和田氏のその後: 「Big 4」は和田氏を黙らせ、取締役会の多数を握って和田氏を解任する投票を行い、和田氏は解任決議の成立を見越して退任を余儀なくされた
和田氏解任に関する同社の公表内容: 「和田氏は世代交代のために自発的に退任した」
メディア報道: 東洋経済、週刊現代(日本の雑誌)、及びPhiladelphia Inquirer(米国紙)が本不祥事を最初に報道
隠蔽: 取締役会は「Big 4」の操り人形であり、「Big 4」が支配する構造である
組織犯罪: 調査報告書は本件取引と反社会的勢力との関連性を示唆
訴訟: 株主より阿部・稲垣に対して大阪地方裁判所にて訴訟が提起されており、また被告に仲井・内田を加える請求がなされている
逮捕: 現時点までに同社関係者で逮捕された者はいない
罪状認否: 現在までに会社側は罪状を認めていない
新たな取締役会: 年次株主総会及び取締役の選任は2020年4月23日に予定されている。「Big 4」は現時点で共に同社の代表取締役である
参考資料
調査報告(2018年1月24日)の日本語原文(会社の都合により一部黒塗り)のリンク:
本件に関わる最新情報を下記URLでご確認いただけます。
日本語:https://www.savesekisuihouse.com/?lang=ja
英語:https://www.savesekisuihouse.com/
[1] 2011〜12年のオリンパス事件は日本のコーポレート・ガバナンスの最悪の失敗事例であると見られている。日本政府は是正すべく改革を行った。しかし、近時の、そして現在も続く積水ハウスにおける不祥事にはオリンパスにおけるコーポレート・ガバナンスの不全と共通の要素が多数ある。したがって、積水ハウスはオリンパス事件の2.0である